産後のトラブルにおいて、腰痛や恥骨痛、尿もれなどと並んでお悩みの方が多いのが「腱鞘炎」です。また産後だけでなく女性全体の有訴者率（症状を訴える方の割合）においても、肩こり、腰痛に次いで３位が手足の関節の痛みであるというデータがあります。

しかし、これだけ多くの方が悩まれているにも関わらず、病院での治療といえば軽度の場合では湿布を渡されて「安静にするように」で終了するケースがほとんどです。よほど重症になってくると注射による治療や腱鞘を切って腱の圧迫を無くすような手術が行われますが、生活が困難なほどの痛みでなければサポーターを巻くなどの保存療法を選択する方が多いでしょう。

ドケルバン腱鞘炎は、長母趾外転筋腱と短母指伸筋腱という二つの腱の狭窄性の炎症のことを言います。手首を仕事等でよく使う人（パソコン仕事や楽器の奏者）や糖尿病で抹消の血流が減少している人にも起こることがありますが、特に多いのが妊娠中・産後・更年期の女性です。

産後の腱鞘炎の原因としては、抱っこや授乳によって手首に負担がかかることで炎症が起こるというケースが最も多いです。しかし、それだけではなくホルモンの影響によって血管が拡張し、浮腫（むくみ）が起きて手首が痛くなっているケースも存在します。実際にはそれらの要因が混合しているケースがほとんどではないかと思われます。

症状としては、親指側の手首の痛みや腫れが起こります。検査法としては親指を握りこんで手首を小指側に曲げるテストがありますが、めちゃくちゃ痛いので注意して行なってください。痛みが出たらドケルバン腱鞘炎である可能性が高いです。

当院での腱鞘炎に対するケアとしては以下の４つを行います。

①長母趾外転筋腱と短母指伸筋腱といった原因筋へのアプローチ
②筋膜の連鎖を意識した腕〜肩〜首へのアプローチ
③セルフケア指導
④日常生活指導（抱っこの仕方）など

保存療法（サポーターや湿布など）だけを行うよりも、かなり痛みの軽減を実感できるはずです。

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